06:消えかかったシングル曲(2)

その2、おまたせいたしました!もう何十年も昔のことですが、この日のことは鮮明に覚えています。
ぼくにとっても一世一代の大勝負みたいな気分になっていたので(笑)
今、振り返ってみれば、ただの若さの勘違いなのですが、、、、その勘違いが、森川美穂が乗り込んだ船の舵を大きく旋回させていくことになります。
今日は、森川美穂の運命を大きく変化させた、門外不出、密室の出来事目黒のヤマハにあった会議室へとみなさまをお連れいたします。
それでは、はじまりはじまり~。
 
1986年の年末頃だったと思うのですが、時期は定かではありません。
・・・前号、このような書き出しで今から書こうとしていることをお伝えしようとしていたのですが、前置きの説明から、別の話になってしまいました。
今日は約30年前のある日、ヤマハ会議室での出来事を、再現フィルムとして文章にしてみたいと思います。なるべくストレートにおとどけします。
参加人数は覚えていませんが、ぼくの印象の中では多くの人がいたような気がします。
次回シングル曲の選考会会議です。ぼくは、そこに20曲近い作家のデモテープをもっていきました。
ぼくがもっているデモテープの中にはのちにシングルになる「Be Free」や「わかりあいたい」のメロディーもすでに存在していました。
他にも、アルバムに入った曲が多数すでにメロディーのみ存在していました。
まず、ヤマハサイドでの作家のデモテープを聴くということで、会議はスタート。
まずは、ヤマハのプロデューサーが、、、
「まず、飛鳥の曲をきいてみてください」・・・と一言だけいって、カセットテープの再生ボタンを押しました。
そうです、当時はバリバリ、カセットテープが活躍していた時代です。
ぼくはぶっ飛びました。そのデモテープが素晴らしかった!
才能が溢れだして、音になっているエネルギーそのものを聴いていると感じた
そんなデモテープでした。
メロディーは他の人には、かけない飛鳥節。デモテープのサウンドは、ローランドTR-808、通称:ヤオヤと呼ばれるチープなリズムマシンと、ゲートリバーブという80年代にはやった特殊なリバーブを駆使し、派手なドラミング。そんなエフェクティブで、ユニークなアレンジアプローチでした。
ここは、うまく伝わらないかもしれませんが、、、、808をつかったフィル・コリンズの名曲「One more night」https://youtu.be/zKVq-P3z5Vg 
この雰囲気と、ゲートリバーブが効いたド派手なドラム、同じくフィル・コリンズ「In The Air Tonight(邦題:夜の囁き)」https://www.youtube.com/watch?v=YkADj0TPrJA この3分16秒からドラムがはげしく登場するところを聞いてもらいたい。
このようなドラミングの要素がはいっていて、、
メロディーは、そうです、、飛鳥さんといえばもうわかっていると思いますが「おんなになあれ」です。
すでにデモテープには歌詞もつけられていて飛鳥さん本人が歌っていたデモテープでした。
ぼくは1回聴いただけでシビレました。体の中心にメロディーがグイグイ入り込んで来て、もう、たまらないという感覚で、一発で気に入りました。
もうこれしかない。そして、カセットテープからは、そのままLong Good-by Long・・・が流れました。
ぼくは聞き終わってからすぐに「素晴らしい!もう一度、聞かせてください!」
とお願いしました。そうしたら、ヤマハのプロデューサーが「(聴かなくて)いいんじゃない?これ、やらないから」と。。。。
「じぇじぇじぇっ!(◎_◎;)、、、 Σ(・□・;)・・・い、、、い、今、何ておっしゃいましたか?」
「これは無理。まだ美穂には歌えない。」
「いや、いや、いやー、やりましょうよ。」
「難しすぎるよ。まだ無理だと思うよ。」
「いや、いや、いや、お願いします。ぼく、今日20曲デモテープもっているけどもう他の曲は聴かなくていいです。お願いします。もう、これ、やらせてください。これ以上のはありません。とにかく、これ、やりましょう。ぜったいに。いい仕上げにします。お願いします!!」
・・・・と繰り返し、繰り返し、しつこーく、土下座するように、お願いをしました。
プロデューサーは、あきれ顏で、「西嶋くんが、そこまでいうなら、やってみる?」・・と言ってくれました。
 
たぶん、スッポンに噛まれたようなそんな気分だっただろうと思います。
「あざーす!」
こうやって、「おんなになあれ」のシングルは世の中に発表されることになりました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

いい話ですね。これは、我ながらファインプレーだと。
あの名曲が、ここでボツになっていたら、いったいあの作品はどうなっていたのでしょうか?
if・・もしも、という話に意味はないのですが、つい考えてしまいます。
「おんなになあれ」ですから、飛鳥さん本人がこの曲を歌うことはありません。そのまま、消えた作品になったのか?あるいは、歌詞をとりかえて、飛鳥さんが歌っていたのでしょうか?
こんな、ちょっとした分岐点で、人生は大きく変化していきます。
次回は、この曲のレコーディングスへと話は進んでいきます。
お楽しみに!
森川スタッフ 西嶋でした。