DOCUMENT FEMALE CHAPTER 04

ドキュメント「female
Chapter 04 「そしてChage」

 もちろん松井五郎が盟友でもあるChageに声をかけることは不自然ではない。「おんなになあれ」はASKAが書いたものだし、C&Aも松井も森川もPOPCONを経験してきていて、その縁から新しい作品が生まれることは自然な事とも言える。しかし、これが実は問題作となった。Chage の書いてきた作品は、今回のアルバム曲のどれとも違う、更に森川がこれまで歌ってきたどれとも違うものだった。

 「鞄と時計」は詞先で生まれた。松井は、あえて「歌謡曲」というキィワードは伝えずにChageの中にある森川美穂像に委ねることにした。都志見隆や山川恵津子のような職人色ではない部分に期待したのかもしれない。上がってきた曲は、ある意味その期待には応えたものになった。ただ、それは森川にとっては挑戦であり、ファンにとってはこの森川美穂をどう受け入れるかのリトマス紙になるものだった。

 Chageと多く仕事をしてきた松井は、彼の作品作りのプロセスをよく知っていた。デモの段階で骨格はできているが、アレンジや現場のインスビレーションで曲は常に変化していく。Chageから届いた音源もいつも通りフレックスな部分があった。例えば1番と2番のフレーズが少し違っていたり、歌詞を優先して譜割りを変えたり、森川からすれば捉えるのが難しい曲だった。

 アレンジもいくつか選択肢があった。バンド的な構成でブルージーに仕上げるか。もう少し音色にギミックを加えるか。そして上がってきたオケ。山川恵津子の選択はその両方をいいバランスでミックスした斬新なものになっていた。

 森川美穂はこの作品をどう育てていくのだろう。
 彼女ひとりのテーマではないかもしれない。
 これまで彼女を支えてきたファンにとっても、やはり未来を問われる作品。
 その反応が楽しみな一曲が生まれた。

text:JD
森川美穂New Album「female」