『Legendary』Mastering 完成

森川美穂の40周年記念アルバムの音源が完成しました。
現在は、ジャケットの制作進行をしているところで、今月末にはデータが完成し、その後プレス行程へと向かいます。 このアルバムは、映画的に大げさに表現すれば、「構想2年半の大作、ついに完成!」ということになります。

作品作り、レコーディング、ダビング、歌入れ、コーラス、ミックス、そして収録曲全てのミックスが終えたら、マスタリングルームに駆け込んで、あぁ、間に合った。。。みたいなことを、それこそもう40年続けてきたわけですが、とても感慨深い思いでマスタリングに立ち会いました。 マスタリングは2チャンネルになったものを、EQなどの処理を施し、アルバム全体を見渡す視点で、整音する作業です。なので、配信になっている音とも少し違ったりします。 森川さんは、ミックス以降のことは、 「そんな細かいこと、私、わからないのでお任せします」という感じで、 相変わらずキッパリしていていいなぁと毎回思います。

制作者の最後の最後のこだわりの砦とでもいう場所です。 レコーディング、歌入れ、ミックス、どれをとっても言えることですが、これらの行程を終えた後、さらに冷静に見つめながら、サウンドイメージを目的の場所へと導いてもらいます。 例えば、わかりやすい例で言えば、「復讐」ですが、配信のマスタリングは、迫力を重視して、低音を強調しながらも、締まった低音を意識しロックサウンドのイメージで仕上げています。 今回のアルバムでは、またトータルの流れも考えて、配信シングルより透明感があるようなイメージで仕上げてもらいました。 このように、1曲ずつミックス音源の確認、マスタリングEQの確認、場合によっては、もっとこんな風に感じたいというリクエストをして、EQポイントをずらしてもらいます。

こんな細かい作業をしながら、いつも思うことがあります。 レコーディングの現場で、歌入れで、ミックスで、マスタリングで、何かを遠慮して言わなかった一言が、音に記録されたままになることがあります。 過ぎてしまえば、たわいもないことばかりですが、その瞬間、正直でない自分がいたことを思い出すことがあります。 ディレクターの仕事は、大勢の方々と関わりながらの仕事なので、わがままであるだけではいけませんが、正直である必要があります。心のどこかに、違和感を感じた時に、その原因を見極めて、短い時間の中で判断して、プレーヤーや、エンジニアや、歌手に、伝えるべきことがあります。 それは、長いフレーズではなく、相手に伝わる的確な言葉でなくてはなりません。 だからと言って、周波数を指定するような言い方は広がりを無くしますので、もっとイメージの広がる範囲を意識した言葉を選びます。 ここで、重要なのは「正直」であることです。 「あれ?」と思った瞬間があれば、それをちゃんとキャッチしないといけません。 音楽は目に見えない時間の流れです。その「あれ?」の瞬間は、もう過去になっています。 引きずられると、すでに進んだ時間の「今」を見失います。

そんなことを思いながら、ほとんど「あれ?」ということのない、素晴らしい作品12曲が仕上がりました。 マスタリングエンジニアの阿部さんが、ポロリと言った言葉があります。 「まるでベスト盤みたいですね」 確かにそうだと思いました。 今回、多くのレジェンドたちの個性が浮かび上がる、独特な作品が集まったアルバムなので、一人の歌手が歌う世界というより、さまざまなキャラクターの作品が集まっているという意味から発せられ言葉だったのですが、確かに、生まれたての「ベスト作品集」という意味でもあると思いました。 そういう意味で、森川美穂らしい、ニューアルバムでありながら、ベスト盤のようなアルバム。 こんなレジェンドたちの作品を歌うことが、森川美穂の40周年となって、とても嬉しい限りです。 リリースは、12月になりますが、11月からは予約販売を始めてまいります。 また「復讐」のミュージックビデオも、11月よりYouTubeでの公開がスタートします。 一人でも多くの方へ、森川美穂の歌声が届きますように。 Legendary 完成間近の、マスタリング完成報告でした。

森川美穂 40周年記念アルバム『Legendary』