DOCUMENT FEMALE CHAPTER 03

ドキュメント「female」
Chapter 03「都志見隆という選択」

 松井は「歌謡曲」というキイワードを聞いた時、最初に思い浮かんだ名前は都志見隆だったと言う。松井-都志見は田原俊彦や郷ひろみといった男性POPSで実績を残してきたコンビであり、邦楽の歌謡曲・演歌と行ったジャンルでもクライアントに信頼が厚いコンビだ。

 彼の代表曲「最後の雨」でもわかるように、歌詞を活かすキャッチーなメロと抑揚は、歌手にとって感情移入しやすいと定評がある。松井がよく言うところの歌詞の行間を都志見は作れる作曲家でもある。跳ねて欲しい言葉、伸ばして欲しい言葉、言葉の持つ物理的な特長を活かすのが彼はうまい。それは彼が歌える作曲家でもあることが大きい。そして彼の声の温度感は森川の声に近いところもある。

 二人の声は距離感が近い。物語の主人公を可視化するように、その様が見えてくる。「涙をいっぱいに目にためて」「漂流夜行」「足跡」「偽証」どれも物語のキャラクターの輪郭がはっきりしていて、所謂「狙い」がはっきりした仕上がりは松井との相性の良さを感じさせる。

 特に「足跡」はいまの森川自身そしてファンにとって重要な作品になった。松井が絶賛していた「Life is Beautiful」を意識していたのは間違いない。今回のアルバムに人生をどう持ち込むか。母との描写からはじまり、人生は美しいと言い切る「Life is Beautiful」を越えるのは難しい。曲調は都志見らしいバラード。歌い上げる部分もありながら、メロディの結びはある意味語りである。松井はそのメロディの意味を考えた。

 「それが生きることなんでしょう
 そうなんでしょう」

 聴く者に委ねたこの部分。
 断定なのか? 問いかけなのか?
 松井-都志見の「狙い」を森川は見事に歌いきっている。

text:JD