DOCUMENT FEMALE CHAPTER 07

Chapter 07 「ユメサライ」の狙い

 まだアルバム制作の話がない頃、この作品から松井-山川-森川ラインははじまった。歌謡曲というキイワードは既にあったものの、歌謡曲という解釈も人によって違う。この場合の歌謡曲を、どの時代に定めるかによっても着地点は変わるだろう。戦前戦後歌謡、昭和歌謡、フォーク歌謡と、実は歌謡曲と言っても、体系的に見ていくと様々な顔がある。

 松井は演歌歌謡曲というジャンルの仕事も多くこなしてきているので、当初、所謂そのものの世界を構築することも考えたらしい。ただ、その場合、やはりこれまでの森川美穂との落差が大きすぎるのではないか。山川もそちら側の作曲家ではない。日本の歌謡曲という様式美は実はそう簡単にできるものでもない。であれば、音楽的にあまりそこに固執するのは止めて、言葉の濃度で歌謡を作り上げればいい。そう松井は決めた。

 「ユメサライ」を聴けばわかる通り、メロディの哀愁感はシャンソンの要素もあり、それでいてグルーヴはロック的でもある。つまり歌謡曲か否かの論点に意味がなく、森川美穂の世界としてひとつのジャンルと言っていいだろう。

 これが出発点であろうと着地点であろうと、軸であることは違いない。

text:JD

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