DOCUMENT FEMALE CHAPTER 09

Chapter 09「また、空が近い」物語の向こう側

 アルバム企画のトークイベントの席で、松井はこの歌詞について語っていた。この歌の二人は、恋愛関係と思ってる方も多いかもしれないが、実は、それだけでなく、友人や親子でもいいと。確かに、ここで描かれている別れは、空という言葉が象徴するように、死別でもあるのかもしれない。そう考えると、いまの森川はこの歌をどういった現実感を持って捉えたのだろう。

 彼女は以前、歌詞の事をあまり深く考え過ぎないようにと語っていたことがある。確かに頭で理解したからといって、いい歌が歌えるというわけではない。更に、松井独特のレトリックは、ストレートな表見に見えて、仕掛けが施されている。タイトルからして「また空が近い」ではなく「また、空が近い」なのか。だが、ここに果たして理解は必要なのか?

 森川の言う-考えない-というのは-感じる-と同義なのだと思う。その上で、彼女がこの歌で示した表現は実に絶妙だ。歌い過ぎず、足りなくもない。最小の力加減でも最大の効果を生む歌になっている。彼女の声によって解き放たれた言葉は、聴く者にそれぞれの物語を与えてくれるだろう。

text:JD
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