Chapter 10「足跡」の問いかけ
昨今、どのメディアに於いても、感動を押し売りするコピーが目立つ。しかし、それはいかがなものか。感性はひとりひとりのもので、晴れた空で泣ける者がいれば雨に涙する者もいる。それを、感動しない方がおかしいとばかりに煽るコピー。特に人生や命にまつわる物語には、そういった傾向が強い。
「足跡」はこのアルバム中、唯一一人称の視点で描かれている。「生き方」をテーマにしたこの曲、都志見隆のデモは大きなバラードだったが、山川のアレンジはあえてそこを煽っていない。壮大に歌い上げる曲にもできる作品である。だが、そうはしなかったのには-感動を煽る-のではなく-感性に従う-作品にしたいという、プロジェクトの意図があったからではないか。
場面は日常の誰にでもある一瞬。未来への不安、過去への後悔、混沌とした感情を抱えながら人は生きている。「足跡」は残してきたものだけでなく、残していくものも含めて、森川は歌っているのだろう。