Chapter 01, 02 を読んでいて気がついたのはキャスティングということ。今回のアルバム「female」は、もうみなさんがご存知のとおり、松井五郎プロデュース作品です。そこで考えてみたいのは、プロデュースって何?ということ。
ぼくの大好きなチコちゃんも、いつも「それって何?」「どーして?」って訊きますが、ぼく自身、若い頃からずーっと、プロデュースって何だろう?ディレクターって何だろう?って思いながら、いろいろとトライしながらやってきました。そこで、長年やってきて、わかったこととして、プロデュースにおけるキャスティング権限の重要性です。
実は、このキャスティングで見え方、聴こえ方の90%は決定されます。タクシードライバーがロバートデニーロじゃくても映画はできますが、どうでしょう? ここにキャスティングの強力さがあります。
たとえば、松井五郎さんにとって、楽曲作品を主役に置けば、森川美穂はキャスティングされた歌手です。日本中に、大人の女性歌手は何人いるのでしょう? 森川の声、歌唱をキャスティングしたともいえます。
では、森川美穂を主役におけば、この歌手が作品を歌うにあたり、どんな演出をしようか?と考えます。映画だったらディレクター(監督)、舞台だったら演出家を選ぶことが、作品カラーを大きく左右します。これに近い感覚だと思いますが、アレンジャーに誰を起用するか?やはりキャスティングが重要になります。
この映画でいう監督とか、舞台でいう演出とかが、レコーディングにおける編曲家といえるのではないでしょうか。ある意味、目に見えない大舞台を創り上げるのがアレンジャーという存在なのです。作品と演者(歌手)をイメージした舞台(=オケ)で、思う存分演じ歌ってもらう、たとえば音のメリハリは、照明効果やスポットライトだったりもします。そんな風に聴いてみると、とても面白いかもしれません。
今回の、舞台演出家ならぬアレンジャーは、全11曲すべて山川恵津子さんが担当しました。ここにプロデューサーとの信頼関係を感じます。森川美穂という、かなりやっかいなボーカリスト。プレイヤーにも、オケにも、動物的に反応するので、アレンジャーの役割はとても重要なのです。
「やっかい」 と書いたのは、これは、本人が意識的に制御できないという意味です。ステージでもレコーディングでも、音を聴いた瞬間に反応する。理解するスピードより早く、声が反応してしまいます。そこに理由はないと森川はいう。歌い続けてきた中で培われてきた才能でもあり、たぶん、この感覚が森川の原点なのだろう。
この「やっかい」をどう料理していくのかがプロデュースの本領発揮となる。しかし「やっかい」はとても大きなカラーにもなりえます。さてさて、そんなアレンジャーという席にキャスティングされた人は山川恵津子という音楽家でした。
森川と山川さんとの出会いは、知っている方も多いと思いますが、アルバム「おんなになあれ」の中に収録されている「午後のシート」の作曲者として、はじめて森川と関わっていただきました。この曲は他にはない、おしゃれな感覚を、森川作品になげこみました。声をはりあげることではなくて、セーブして歌うことで得られる感覚を、楽曲として提案し、森川はすぐに反応し、自然とあの歌い方となりました。
それが、今回、森川美穂はどっぷりと11曲反応させてもらったというわけです。これは、山川恵津子の戦略か? 松井五郎の戦略か? もはや今となっては正直よくわかりません。
毎日、femaleの完成音源を聴き続けていますが、結果は、すばらしい作品集となったということだけです。なので、ぼくにとっては、戦略がどうだったかについては、今となってはどちらでもよいわけです。ただただ、お二人に感謝をしながら、11編の女性の物語を、毎日、趣味のように聴いております。
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